カナダの大学は世界的に見て教育水準が高いとされています。またイギリスとアメリカの中間のような聞き取りやすい英語が使われるため、綺麗な英語を習得できる環境として人気です。学費面ではアメリカの半額以下と比較的安い点が特徴で、治安が良く過ごしやすく物価も安いことから日本だけでなく世界中から留学生が集まっています。
今回はそんなカナダの大学の概要や入学方法を中心に、世界ランキングにも登場する人気大学についてもご紹介していきます。
カナダの大学概要
カナダの大学と日本の大学では異なる点が多いですが、アメリカの大学ともかなり性質が異なっています。以下で概要をご紹介します。
1.国内に90校の大学と170校の短大
カナダの4年制大学はそのほとんどが州立の公立大学です。大学数が少ないため各大学の教育水準に大きな差はなく、全体として先進国の中でも高い水準にあります。それぞれの大学が特色・強みを持っており各分野で世界的に評価されていて、日本でこそ知られていなくても欧米での認知度が高いため、カナダの大学入学は欧米での就職に有利とされています。
90校の4年制大学のほか、州立(一部私立)で2年制の短期大学(コミュニティカレッジ)が170校ほどあります。4年制の大学は単位取得が難しく入学基準が高い傾向があるのですが、比較的入学しやすい短大で1~2年次の単位を取得してから大学の3年次に編入することもできるため、多くの学生が活用しています。
また留学生はカナダの大学を卒業後最長3年の就労ビザが取得でき、その上永住権を申請できる制度もあり、世界各国から優秀な留学生がカナダに集まっています。
カナダの大学は州ごとに強みとしている分野があり、地元産業と結びついた共同研究も盛んに行われています。バンクーバーのあるブリティッシュコロンビア州はマルチメディアやバイオ・次世代エネルギーなど環境に力を入れており、アルバータ州では天然資源のマネジメントや工学が盛んです。また首都オタワのあるオンタリオ州やケベック州ではビジネス、IT、通信、アート、航空宇宙産業などが盛んです。他にも農業や漁業を得意とする地域もあり、国内でも地域によって特徴が異なるので、大学選びの参考にするとよいでしょう。
2.カナダの大学の教育制度 卒業まで4年!
カナダの大学の教育制度は日本と同じで、計4年で卒業することができます。ただし入学に必要な英語のレベルが高いため、大学留学する際のフローとしては以下のパターンが考えられます。
①大学にそのまま入学
英語力が条件を満たしている場合はストレートで大学入学が可能です。
②大学条件付き入学
一定の英語レベルをクリアしている場合は、入学前に特定期間大学付属のESL(英語を母語としない留学生が英語力を補強するために履修する科目)で勉強し、優秀な成績を修めてから実際に入学、入学から4年で卒業という形になります。
③短大から大学に編入
大学と比較すると入学のハードルの低い短大に入学して好成績を修めてから、3年次で大学に編入するやり方です。場合によっては短大入学の前に短大付属のESLで学ぶケースもあります。
④進学予備校に入学
民間の語学学校で勉強してから、その後の英語力の伸びを見て現地で進学先を選ぶという手段もあります。語学学校のESLで勉強した後大学に4年通うパターンと、短大2年を経て大学3年次に編入するパターンがあります。
3.カナダの大学の学部・専攻
カナダの大学では数多くの学部・専攻が選択できます。中には日本ではなじみのないユニークなものもあり、専攻できる種類は日本より多いです。特にカナダが強いとされる分野は経営学、マーケティング学、情報工学、観光学、ホテル学、スポーツマネジメント学、国際関係学、開発学、自然環境学、海洋生物学、英語教授学、医学、看護学などです。
例えばカナダ屈指の名門であるトロント大学は国内最大規模の大学で、プログラムの多様性もトップクラス。理工学部、法学部、教育学部、経営・商学部、医学部や看護学部など17の学部があり、コースにして300 以上用意があります。
カナダ大学の入学方法
カナダの教育システムでは、アメリカのように準備コースに入る必要はありません。また日本のように国の機関が教育制度を決めているのではなくそれぞれの州が権限を持っているため、州によっては4年制大学を3年間で修了できるコースがあったり、2年制大学からの編入を認めていないケースがあったりします。そのため州をまたいで他の大学へ編入をする場合は注意しなくてはなりません。
1.入試はなし!出願に必要なもの
日本のような入試はありませんが、その分これまでの成績が必要になってきます。特に英語力は重視されます。
・入学願書
・高校の成績証明書
・卒業又は在学証明書
・TOEFLスコア
基本的には上記を用意すれば出願が可能です。大学によってはその他にエッセイを用意させるケースもあります。
2.カナダの4年制大学入学に必要な条件
・学歴:高卒以上(あるいは卒業見込)
・成績:過去3年間の成績が5段階評価で平均3.8以上程度
・英語力:TOEFLiBT81以上程度(条件付入学の場合、付属のESLで準備可能)
カナダの4年制大学は概して入学に必要なレベルが高いです。英語力に自信がなく不安の残る場合は、付属のESLに通って成績を残してから入学するか、下記の短大に入学してから編入するという選択肢もあります。
3.カナダの短期大学(コミュニティカレッジ)入学に必要な条件
学歴:高卒以上(あるいは卒業見込)
成績:過去3年間の成績が5段階評価で平均3.1以上程度
英語力:TOEFLiBT81以上程度(条件付入学の場合、付属のESLで準備可能)
カナダの短大のコースはアメリカと同様で2種類あり、4年制大学への編入を目的とした大学進学コースと、就職を目的とした職業訓練コースが設置されています。
大学進学コースでは専攻を絞らずに一般教養を幅広く学び、一方職業訓練コースでは1年次から希望する専門分野を専攻します。4年制大学と比較すると学費が安めで入学基準も低いため、まず短大に入学し、短大卒業とのタイミングで大学3年次に編入する方法が普及しています。
カナダ大学の4つの魅力
カナダの大学の特徴として魅力的な点を以下に挙げています。
1.入試がなく、留学生にとっても門戸が広い
カナダには日本における入試のような、1回のペーパーテストで合否を決定するシステムはありません。入学の判断材料は英語力と日本の高校での成績と卒業証明だけです。そう聞くと入学自体は簡単そうですが、入学に必要な成績のハードルが高いうえ、入学してから単位を取得し卒業するまでが難しいと言われています。
またカナダは国として留学生の受け入れを積極的に行なっています。世界の優秀な人材にカナダで就学・就労してもらい、大学卒業後もカナダのイノベーションのけん引と経済の活性化に貢献してもらう狙いがあるのです。
2.教育水準が高い
カナダの大学の数は少ないですが、世界大学ランキングで100位内に4校ランクインしていることから教育水準の高さがうかがえます。一方、現在日本には数多くの大学がありますが、教育の質には偏りがあります。
3.卒業後の就職の幅(Post-Graduation Work Permit)
カナダの公立大学・短大と、一部私立短大・専門学校で8ヶ月以上のプログラムを受講した場合に取得できる就労ビザがあります。2年のプログラムを取ると3年の就労ビザが発行されるため、移民を目指す人にもカレッジや大学への進学が人気となっています。
4.多様性を認め合う文化
カナダは移民大国で、移民にフレンドリーな国としても有名です。2020年までに移民を34万人に増やすというイミグレーションプランも発表しています。多国籍な留学生と交流ができ、また留学生にとっても馴染みやすい環境として人気があります。
また永住の権利を得ることも可能で、永住権取得のために大学やカレッジに行っている留学生も多いようです。外国人に対して差別が少なく、親しみをもって接してもらえるという点は魅力的です。
カナダの大学、国内最高ランク
2018年度の世界大学ランキングでも100位内に入っている国内トップ4の大学が以下になります。
・1位 トロント大学
・2位 マギル大学
・3位 ブリティッシュコロンビア大学
・4位 アルバータ大学
伝統と最高の教育環境を持つ、カナダで最大であるトロント大学が1位です。ノーベル賞受賞者を複数人輩出していることで有名ですね。2位はフランス語圏の英語系大学で、研究大学としての評価が高いマギル大学です。3位は西部で最大、カナダを代表する総合大学のブリティッシュコロンビア大学で、留学生の受け入れも積極的に行なっています。また4位には世界でもトップクラスの規模といわれる国立ナノテクノロジー研究所が敷地内にあるアルバータ大学がランクインしています。
世界の大学ランキングでは、1位から順に31位、32位、51位、90位となっています。ちなみに日本の大学では東大が28位、京大が36位にランクインしているので参考にしてください。他、世界ランキング外にはなりますがカナダ国内での大学ランキングでは以下の大学が続きます。
・5位 クィーンズ大学
・6位 マクマスター大学
・7位 ウェスタン大学
・8位 ダルハウジー大学
・9位 カルガリー大学
・10位 オタワ大学
5位以降の大学も、優秀な学生が集まり数々の賞やランキングに名を連ねているカナダトップレベルの大学群となっています。
学費の安い地方都市おすすめ大学5校
カナダの公立大学は、州によって学費が異なります。留学先として人気のバンクーバーがあるブリティッシュコロンビア州の学費が平均的とされていて、最も学費が高いのはカナダの中でも大学数が最多、トロントのあるオンタリオ州です。オンタリオ州内の大学の2017年平均授業料は年間約30,000ドル(約253万円)となっています。一方で、ニューファンドランド・ラブラドール州では年間約9360ドル(約79万円)で、州ごとに大きな差があることが分かります。その他にもノバスコシア州、ニューブランズウィック州、マニトバ州の学費は安く、年間約15,000ドル(約126万円)で、日本の私立大学の費用とあまり変わらない額になります。
以下で具体的なおすすめ大学をご紹介します。
・マニトバ大学(マニトバ州)
・アカーディア大学(ノバスコシア州)
・セントメアリーズ大学(ノバスコシア州)
・ニューブランズウィック大学(ニューブランズウィック州)
・メモリアル大学(ニューファンドランド・ラブラドール州)
地域で最大の研究総合教育機関であるマニトバ大学は州都ウィニペグの中心地にあり、町全体がキャンパスのようになっています。
ノバスコシア州にあり、映画の撮影も行われる歴史的な町ウォルフビルにあるのはアカーディア大学で、規模は小さいながらカリキュラムが豊富で授業が少人数制のため教授と学生の距離が近いのが特徴です。
同じくノバスコシア州のセントメアリーズ大学はプロフェッショナルの育成プログラムで高く評価されている大学です。プログラムでは企業での就労体験ができるので、学生のうちから実践的なスキルを身につけることができます。
ニューブランズウィック大学は200年以上の歴史を持つカナダ最古の大学で、カナダで唯一NASAの支援を受けた施設を持つ大学として知られています。
メモリアル大学は研究を重視した総合大学で、学費が最も安いとされるニューファンドランド・ラブラドール州にあります。ヨーロッパからの移民が開拓した土地なので、歴史ある美しい街並みが広がっているうえ、壮大な自然に囲まれていて、治安が良いという特徴があります。
カナダでは人気の高い大都市以外にも、水準の高い教育を受けることができる地方都市の大学が多いことがお分かりいただけたと思います。
まとめ
カナダの優れた教育制度、充実した訓練プログラムや研究施設は国際的に高い評価を得ています。また治安の良さや環境の良さも世界的に見てトップクラス。日本で知られていなくても質の良い学習と経験ができる大学がたくさんあり、大学卒業後は就労も可能です。カナダ留学の人気が世界的に高いのがわかりますね。
カナダの大学に留学を希望する場合は、州ごと・学部ごとにそれぞれ特徴や強みが異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。