フランスへ長期留学中の方、これから長期滞在される方は現地の医療事情が気になりますよね。
フランスの医療保険制度は日本と同様にトップレベルの環境が整っているので心配は不要です。
ただし、医療制度は複雑な仕組みのため、万が一の病気や事故による高額請求のリスクもあります。
この記事では、フランスの医療事情と医療保険の必要性について詳しく見ていきましょう。
フランスの医療事情について
フランスの医療機関は衛生面と医療水準は共に良好な状態を維持しています。
他の欧米諸国と比較しても医療水準は高く、日本と変わらない医療を受けることが可能です。
フランスの社会保障(Sécurité sociale)は医療や年金、健康保険をトータルで管理しています。
フランスは日本と同じ国民皆保険制度を採用しており、国民は公的医療の健康保険(Assurance maladie)に加入しています。
フランスの医療保険制度は2階式となっており、誰でも医療費を軽減することが可能です。
基礎医療保険
Sécurité sociale(セキュリテ・ソシアル)
◆2階
任意保険
Mutuelle(ミュチュエル)
世界の医療事情 フランス | 外務省
https://www.mofa.go.jp/
フランスの基礎医療保険
フランスの医療保険制度は、職業ごとに制度が複数あり、様々な職域保険が存在します。
職域保険によって疾病保険金庫(caisse)が設置されており運営されています。
例えば、職域ごとに分けられた疾病保険金庫によって国民皆保険が別々に管理されているのです。
農業や商工業などの職種の方は、退職後も変わらずに同じ保険制度が継続されます。
職域保険の対象にならない方や低所得層の方はCMU(基礎普遍的医療保険)に加入します。
CMUは外国人を含めた3ヶ月以上継続してフランスに居住する方も加入できます。
学生医療保険や職域対象外の方もフランスの医療機関にて無料で公的な医療保障を受けることができるのです。
2016年にはCMUがグレードアップした「PUMA(Protection universelle maladie)」と呼ばれる普遍的疾病保護制度も登場しました。
①職域ごとの各基礎保険
該当する仕事に従事している、または以前従事されていた方
②学生用の基礎医療保険制度(Sécurité sociale des étudiants)
一定の条件を満たした28歳以下の学生の方
③ 基礎CMU(PUMA)
上記の①・②に該当されない方
健康保険証Carte Vitale(カルト・ヴィタル)とは?
基礎医療保険に加入すると、Carte Vitale(カルト・ヴィタル)と呼ばれる健康保険証が送付されます。
ICチップが付いたカードには、個人情報や保険データが入っており、診察・検査、薬局での処方の際に必要です。
Carte Vitaleを提示すると70%の払い戻しを受けられますが、持っていない場合は全額自己負担となります。
また、診療情報の保管や共有、診療費に関する手続きをスムーズにする役割があります。
ほとんどの医療機関ではCarte Vitaleを読み取る機械が設置されており、受診する際に必要です。
保険加入手続き後、カードが届くまでには約3ヶ月程度かかります。
届かない場合は最寄りのCPAM(Caisse Primaire d’Assurance Maladie)へ連絡しましょう。
フランスに長期滞在する場合の健康保険は?
フランスに3ヶ月以上合法的に滞在する方は、外国人も含め、公的医療の健康保険に加入する必要があります。
28歳以下の方
Sécurité sociale des étudiants(学生社会保障)へ加入する
公認の高等教育機関へ3ヶ月以上の登録をする
29歳以上の方
個人で普遍的医療保障「CMU(Couverture maladie universelle)」へ加入する
フランスに長期滞在する方は、健康保険へ加入すると現地で医療を受けた際に支払った医療費の一部が還付されます。
医療費を建て替えるシステムのため、手間がかかりますが公的保障を上手く利用しましょう。
自己負担分を補う保険もある
フランスには基礎医療保険で還付されない自己負担分を補ってもらえる任意保険「Mutuelle(ミュチュエル)」があります。
Sécurité sociale des étudiants(学生社会保障)に加入している方はMutuelleに加入することが可能です。
「Mutuelle(ミュチュエル)」はフランスの基礎医療保険をカバーする民間の保険のため、契約内容によって還付率はそれぞれ異なります。
高額の保険に加入すると、入院費用や手術費用が全額適用されるケースもあるので確認しましょう。
フランスのかかりつけ医制度とは?
フランスでは、かかりつけ医制度が採用されておりかかりつけ医の登録が必要です。
かかりつけ医となる医師を探すには、Sécurité socialeに保険医登録をした一般(Généraliste)から見つけます。
専門医(Spécialiste)や病院勤務医を選ぶことも可能です。
かかりつけ医の紹介状なしに他の医療機関を受診した場合には、基礎保険の自己負担額が増えるペナルティが設定されているので注意しましょう。(例外は産婦人科や小児科など)
フランスの医療費っていくら?
公立病院の場合は予約待ちが約2~3ヶ月先になることも多く、すぐには診てもらうことができません。
私立病院は医療費が高額ですが、専門医への受診をスピーディーに診てもらえるのがメリットです。
私立病院は海外の旅行保険も適用されることが多く治療費の大部分をカバーしてもらえることも。
フランス在住の日本人は日本語対応の私立病院を主に利用しているケースが多いです。
mutuelleに加入していてかかりつけ医に登録している医者で診察してもらう場合は医療費が無料です。
ただし、フランスの医療制度はセクター1,2,3と医師によって料金が異なります。
セクター1のみ、国の保険であるセキュリテソシアルから70%が返金され、残り30%は任意保険で返金されます。
セキュ所属の医者
セキュの定めた料金で診察する
100%医療費を返金してもらえる
セクター2
セキュ所属の医者
医師が自分で診察料を決める
セクター3
セキュ非所属の医者
全て患者の自己負担で診察する
セクター1でもかかりつけ医に登録していない場合は返金額が下がるので要注意。
フランスで医療保険に入れるの?
2018年から、外国人留学生は一般のセキュリテ・ソシアルに加入する必要があります。
長期学生ビザ(VLS-TS)を取得している外国人留学生はセキュリテ・ソシアルに無料で加入できます。
登録の前に以下の手続きを済ませておきましょう。
- OFIIでビザを有効化する
- 留学先の高等教育機関に登録する
- 銀行口座を開設する
上記の準備が終わったら以下のサイトからセキュリテ・ソシアルに登録しましょう。
外国人学生専用の健康保険のサイト
https://etudiant-etranger.ameli.fr/
セキュリテソシアルへの加入が必須ではない留学の場合は民間保険に加入する必要があります。
フランス国内の保険会社に加入する場合、保険料は年間約150~550ユーロ程度です。
フランス渡航前に日本国内で保険に加入しておくと手続きがスムーズになるのでおすすめです。
保険には加入しておくべき理由
フランスの社会保険「セキュリテ・ソシアル」はフランス留学中の日本人も加入することができます。
少しでも自己負担を減らすには、セキュリテ・ソシアルを補完する任意保険「mutuelle」にも加入すると安心です。
万が一の急な病気や事故による大怪我が起こった時に医療費の払い戻し金額を増やすことができます。
まとめ
今回は、フランスの医療事情や保険加入の必要性についてご紹介しました。
フランスの医療制度は複雑で一見分かりにくいですが、幅広い人に負担を軽減できる仕組みが整っています。
フランスに長期滞在する方は、日本国内でも民間の保険に加入して万全な体制を整えておきましょう。