マレーシアの大学の出願条件|必要な成績・英語力(IELTS)と出願の流れ

マレーシアの大学の出願条件|必要な成績・英語力(IELTS)と出願の流れ

マレーシアの大学は、英語で学べて学費が欧米の半分以下という理由で、日本人の進学先として年々選ばれるようになっています。ただ、いざ準備を始めようとすると「何を持っていれば出願できるのか」がはっきり書かれた日本語情報がほとんどありません。

結論を先に言うと、押さえるべきは3つです。①日本の高校卒業だけでは、多くの大学で学士課程に直接入れない ②必要な英語力はIELTS 4.0〜6.5と大学・コースで大きく違う ③日本国籍は入国前にビザの事前取得が必要。この3点を知らずに動くと、渡航時期が半年ずれます。

この記事では、マレーシア政府の留学生受け入れ機関(EMGS)と各大学の公表要件をもとに、必要な成績・英語力・手続きの流れを整理します。

※本記事の数値は2026年9月時点で各大学・機関が公表している内容です。リンギットは1RM=38円で換算しています。

目次

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大前提:マレーシアは「12年の教育」を求めている

マレーシアの留学生受け入れを一元管理しているのはEMGS(Education Malaysia Global Services)という政府系機関です。学生ビザの申請はすべてここを通ります。

EMGSが示す基本要件は、ディプロマまたは学位課程に出願するには、12年間の教育を修了し、教育省が認める国内・国際試験を受けていることです。日本の高校卒業は12年間の教育にあたるので、この条件そのものは満たします。

問題はここからです。12年の教育を満たしていることと、学士課程に直接入学できることは別だからです。

なぜ日本の高卒では直接入学しにくいのか

マレーシアの大学は、イギリスの学制を土台にしています。イギリス式では、中等教育(O-Level/マレーシアのSPM)のあとに大学準備課程(A-Level、ファウンデーション、IBなど)を1〜2年置き、そのうえで学士課程が3年です。

日本の高校3年間は、この「大学準備課程」に相当する部分を含んでいません。そのため、日本の高校卒業資格だけでは、多くの大学・多くの専攻で学士課程に直接入学できません。イギリスやオーストラリアに進学する場合とまったく同じ構造です。

実際、マレーシアの主要大学はいずれも、直接入学の資格がない留学生向けにファウンデーション課程を用意しています。ノッティンガム大学マレーシア校も、学部課程に直接入学する資格がない留学生向けにファウンデーションコースを設けていると案内しています。

ルートは2つ:ファウンデーション経由か、事前に資格を取るか

ルート 内容 期間 向いている人
①ファウンデーション経由 大学附属の準備課程を1年 → 学士課程3年 合計4年 高校卒業後すぐ渡航したい人。大半がこちら
②直接入学 A-Level・IB・国際バカロレアなどを日本または第三国で取得 → 学士課程3年 合計3年+準備期間 インターナショナルスクール出身者

日本の一般的な高校を出た人は、実質的に①一択と考えて計画したほうが安全です。②は、日本国内でA-LevelやIBを取得している人向けのルートです。

ファウンデーションは「大学の中」にある

誤解されやすいのですが、マレーシアのファウンデーションは語学学校ではありません。大学が自校の学士課程に接続するために運営している正規課程で、専攻分野別(ビジネス、工学、IT、デザインなど)に分かれています。

そのため、入った大学のファウンデーションを修了すれば、原則としてその大学の学士課程に進めるという接続が保証されます。逆に、他大学のファウンデーションから移る場合は個別の審査になります。ファウンデーションを選ぶ時点で、実質的に4年間の進学先を決めていると考えてください。

英語要件:大学とコースで大きく違う

マレーシア進学でいちばん誤解が多いのが英語要件です。「マレーシアは英語のハードルが低い」と一括りに言われますが、実際は大学によって2バンド近い差があります。

例1:アジア太平洋大学(APU)— 課程別に細かく設定

APUは要件を課程ごとに公表しています。

課程 IELTS PTE Academic MUET
ファウンデーション 4.0 36 Band 3
ディプロマ(ビジネス、工学など) 5.0 47 Band 3.5
学士(IT、工学、会計、心理学、建築など) 5.0 47 Band 3.5
学士(経営、マーケティング、デザインなど) 5.5 51 Band 4

ファウンデーション入学ならIELTS 4.0。これは日本の高校生でも十分に射程に入る水準です。

例2:ノッティンガム大学マレーシア校 — 学部はIELTS 6.0〜6.5

一方、イギリスの大学のマレーシア校舎(ブランチキャンパス)は水準が上がります。ノッティンガム大学マレーシア校の学部課程は、コースによってIELTS 6.0〜6.5が必要です。イギリス本校と同じ学位を出すので、要求水準も本校に準じます。

要件に届かない場合は、同校のFoundation in Englishなどで英語力を上げてから進む流れになります。

スコアがなくても出願できる場合がある

APUは、英語要件を満たしていない学生について条件付きで学生ビザを申請し、到着後に英語課程を受講することを認めています。ただし12か月以内に必要な英語力に達しない場合は帰国することになる、とも明記されています。

「スコアがないから出願できない」わけではありませんが、期限付きの猶予だという理解が必要です。

TOEFLを使う人は2026年のスコア改定に注意

TOEFL iBTは2026年1月21日から、総合スコアが従来の0〜120点から1〜6のバンド(0.5刻み)に変わりました。4技能の平均を0.5刻みで丸めた数値が総合スコアになります。

APUの要件表でも、ファウンデーションはTOEFL iBT 1.5、学士は2.5〜3.5と新しいスケールで記載されています。古い「iBT 60点」のような感覚で見ると数字の意味を取り違えます。改定から2年間は0〜120換算も併記されるので、出願先がどちらの表記を使っているか確認してください。

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学費:年間RM57,000〜67,000が一つの目安

費用感を、公表値がはっきりしているノッティンガム大学マレーシア校の2026年度・留学生向け学費で見ます。

専攻 年間学費 円換算(1RM=38円)
国際ビジネス経営、ビジネス経済・金融 RM57,000 約216万円
コンピュータサイエンス(AI含む) RM57,000 約216万円
化学工学・機械工学(MEng) RM67,000 約254万円

同校は入学年の学費が在学中ずっと固定されると明記しています(イギリス校・中国校への移籍や2+2プログラムは対象外)。為替以外の値上がりリスクがない点は、4年間の資金計画では大きな安心材料です。

ただし注意点が1つあります。2025年7月1日から、留学生(非マレーシア国籍)には6%のSST(売上サービス税)が課されます。RM57,000なら約RM60,400、円換算で約230万円が実際の負担です。

マレーシアの私立大学のファウンデーションは、上位校でRM35,000〜55,000程度が相場です。より幅広い費用の内訳はマレーシア大学への留学費用について徹底解説にまとめています。

学生ビザ:日本国籍は「入国前の取得」が必要

ここが手続き上、いちばん事故が起きやすいところです。

VAL(ビザ承認レター)をEMGS経由で取る

マレーシアの学生ビザは、大学から入学許可を得たあと、EMGSを通じてVAL(Visa Approval Letter)を申請する流れです。申請はEMGSのウェブサイト、EMGSのアプリ、または大学のSTARSシステム経由で行います。

必要書類は、証明写真、パスポートの身分事項ページ、入学許可書、健康申告書、成績証明書・卒業証明書などです。英語能力証明を添付しないと審査が遅れるとEMGSが注意喚起しています。

日本国籍は「Visa With Reference(VDR)」の対象

ここが日本人固有のポイントです。マレーシアには、入国前に在外公館でビザを取得しなければならない国のリストがあり、日本はこのリストに含まれています

テイラーズ大学の留学生向け案内でも、該当国籍の学生はマレーシアの在外公館でVDR(Visa With Reference)を取得したうえで入国し、入国時にVAL(ビザ承認レター)を提示する必要があると明記されています。

「観光ビザで入って現地で切り替える」ことはできません。VAL取得 → 日本国内でVDR取得 → 渡航という順番が固定されているため、入学の数か月前から逆算して動く必要があります。

入学後もビザ更新の条件がある

学生パスは毎年更新です。EMGSは更新条件としてCGPA 2.0以上、かつ出席率80%以上を明示しています。成績が落ちるとビザが切れる、という仕組みです。日本の大学の感覚とは違うので、入学前に理解しておく必要があります。

出願から渡航までの流れ

  1. 大学・専攻を決める(ファウンデーションの選択が実質的に学士課程の選択になるため、ここが最重要)
  2. 英語スコアを準備する(IELTSが最も広く使われる。ファウンデーション狙いなら4.0〜5.0が目安)
  3. 大学に出願。成績証明書・卒業証明書・パスポート・英語スコアを提出
  4. 入学許可(Offer Letter)を受け取る
  5. EMGS経由でVALを申請。健康申告書などを提出。処理に時間がかかるため余裕を持つ
  6. VALが出たら、日本のマレーシア大使館・領事館でVDRを取得
  7. 渡航。入国時にVALを提示。到着後に健康診断、iKad(学生証兼身分証)の取得

入学時期は大学によって年2〜4回あります。1月・5月・9月あたりに設定されていることが多く、日本の3月卒業から逆算すると5月入学か9月入学が自然です。

費用の全体像:学費以外に何がかかるか

学費だけを見て予算を組むと、あとで足りなくなります。マレーシア進学でかかる費用を項目で分解します。

項目 内容 タイミング
学費 年間RM57,000〜67,000が一つの目安(大学・専攻で大きく変動) 毎年
SST(売上サービス税) 留学生は学費の6%が加算 毎年
ファウンデーション学費 上位私立大でRM35,000〜55,000程度 1年目
EMGS申請費用 学生パス申請、健康診断、医療保険、iKad発行など 初年度+更新時
VDR取得 日本のマレーシア公館での手続き 渡航前
住居費 学生寮または民間コンドミニアム 毎月
生活費 食費・通信・交通など 毎月
渡航費 往復航空券。一時帰国の回数で変動 年1〜2回

EMGSの費用は大学・国籍・在籍期間によって変わるため、EMGSのサイトにある費用計算ツールで事前に試算しておくと確実です。

生活費は都市とライフスタイルで大きく変わります。クアラルンプール中心部の民間コンドミニアムと、郊外キャンパスの学生寮とでは倍近い差がつくことも珍しくありません。「マレーシアは物価が安い」は正しいものの、住む場所の選び方次第で節約効果は簡単に消えます

入学時期と、逆算のスケジュール

マレーシアの私立大学は、入学時期が年に2〜4回設定されています。1月・5月・9月あたりが代表的です。日本の高校は3月卒業なので、無理のない選択肢は次の2つです。

入学時期 逆算の動き 向いている人
5月入学 高3の秋までにIELTS取得 → 冬に出願 → 3月卒業後すぐビザ手続き → 5月渡航 ブランクを作りたくない人
9月入学 高3の冬〜春にIELTS取得 → 春に出願 → 夏にビザ手続き → 9月渡航 英語の準備に時間をかけたい人

どちらの場合も、律速になるのは英語スコアとビザ手続きです。入学許可が出てからVAL申請、そのあと日本でVDR取得という順番なので、ここに数か月を見込む必要があります。「入学の3か月前に動き始める」では間に合わないことがあると考えてください。

よくある質問

Q. 日本の大学を中退・休学してから行けますか

可能です。ただし日本の大学で修得した単位がマレーシアの大学でどこまで認められるかは、大学・専攻ごとの個別審査になります。単位移行を前提にするなら、出願前に大学へ成績証明書を送って事前評価を依頼するのが確実です。

Q. 英語のスコアがまったくない状態でも出願できますか

大学によっては可能です。APUのように、英語要件を満たしていない学生に条件付きで学生ビザを認め、到着後に英語課程を受講させる仕組みを持つ大学があります。ただし12か月以内に必要な水準に達しなければ帰国することになるため、猶予期間であって免除ではありません。

Q. ファウンデーションを飛ばす方法はありますか

日本国内でA-LevelやIB(国際バカロレア)を取得していれば直接入学の対象になります。ただし、一般的な日本の高校に通っている場合、この選択肢を取るのは現実的ではありません。ファウンデーションの1年を「余分な1年」と捉えるより、英語と専門の土台を作る期間と位置づけたほうが結果は良くなります

Q. IELTSとMUET、どちらを受けるべきですか

日本から出願するならIELTSです。MUET(Malaysian University English Test)はマレーシア国内の試験で、日本国内での受験機会がありません。日本人が現実的に使えるのはIELTS、次いでTOEFL・PTEという順になります。

Q. 大学選びで最初に決めるべきことは何ですか

「どの学位を取りたいか」です。マレーシアの大学の学位には、その大学自身の学位、提携する英・豪の大学の学位、その両方(ダブルディグリー)の3種類があります。ここを決めないまま大学名だけで選ぶと、入学後に方向転換ができません

マレーシア進学で見落とされがちな3点

1. 「安いから」で選ぶと後悔する

学費は欧米の半分以下ですが、それだけを理由に選ぶと、授業についていけない・現地の生活に馴染めないといった問題が起きます。マレーシアの大学は授業も課題もすべて英語で、イギリス式の評価基準がそのまま適用されます。

2. 学位の「出どころ」を確認する

マレーシアの大学の学位には、①その大学自身の学位、②提携する英・豪の大学の学位、③両方(ダブルディグリー)の3種類があります。同じキャンパスで学んでも、最終的に手にする学位はまったく違います。この違いは進学先選びの核心なので、別記事で詳しく解説しています。

3. 卒業後の進路を先に考える

現地就職、日本での就活、大学院進学のどれを想定するかで、選ぶべき大学と学位の種類が変わります。日本での就活を主戦場にするなら、日本側での知名度が高い英・豪の大学名が学位に入っているかどうかは無視できない要素です。

まとめ

  • マレーシアは12年の教育修了が基本要件。日本の高卒は該当するが、学士課程への直接入学は多くの場合できない
  • 現実的なルートはファウンデーション1年+学士3年=計4年
  • 英語要件は大学差が大きい。ファウンデーションならIELTS 4.0(APU)、英国系ブランチキャンパスの学部はIELTS 6.0〜6.5(ノッティンガム大学マレーシア校)
  • TOEFLは2026年1月21日から1〜6のバンド表記に変更。旧スコアの感覚で読まない
  • 学費は年間RM57,000〜67,000(約216〜254万円)が一つの目安。留学生には6%のSSTが加算
  • 日本国籍は入国前にVDRの取得が必要。VAL → VDR → 渡航の順番は動かせない
  • 学生パスの更新にはCGPA 2.0以上・出席率80%以上が必要

マレーシア進学は、要件そのものは欧米より緩やかです。一方で、ファウンデーションの選択が4年間を決める点と、ビザの順番が固定されている点の2つは、あとから取り返しがききません。ここだけは出願前に確定させておくことをおすすめします。

マレーシアの大学の全体像はマレーシアのおすすめ大学!費用相場はどれくらい?、入学方法の概要はマレーシア大学の入学方法についてもあわせてご覧ください。

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